浅草公証役場の公証人、雨宮則夫先生の研修会「公証役場の活用について」(東京都行政書士会市民法務部主催)に昨日、参加しました。
雨宮先生は、長年、全国各地の家庭裁判所・地方裁判所の判事を歴任され、退官後に公証人となられました。
家庭裁判所出身の公証人は少ないそうで、貴重な存在でいらっしゃいます。
また、東京家庭裁判所では、遺産分割専門部で遺産分けをめぐる複雑・長期化した案件にも関わってこられたとのことで、実務経験に基づいたお話を色々伺うことができ、勉強になりました。
公証人の仕事は幅広いですが、大別すると、「公正証書の作成」「認証(ある行為又は文書が正当な手続き・方式に従っていることを公の機関が証明すること)」「確定日付の付与」となります。「公正証書」としては、遺言をイメージする方が多いかもしれません。
(質問者)「遺言は、いつ作成するのがいいのでしょうか?」
(雨宮先生)「ぜひ、元気なときに作成していただきたいです。」
死期が近づいてから、遺言を残そうと考える方がどうしても多いですが、間に合わなかった事例をいくつも見てこられたそうです。
法定相続人でない人(たとえば内縁の妻)に遺産を譲りたいと生前に思っていたとしても、遺言を残さなければ、それは不可能となります。
緊急性のあるときは、できる限り優先的に対応いただけるとのことですが、遺言を残したいと思っている方は、お元気なうちにぜひご検討ください。
(質問者)「公正証書遺言と自筆証書遺言、どちらがよいでしょうか?」
自筆証書遺言の場合、相続開始後に家庭裁判所で「検認」という手続きが必要になります。
この手続きによって、相続人立会のもとで遺言が開封され、内容が明確にされ、偽造等を防止します。
「検認」には、通常1~2か月を要しますが、公正証書遺言の場合、この「検認」が不要です。
また、「検認」に関しては、相続人全員の戸籍謄本等の添付書類の提出も必要ですが、ご事情によっては、添付書類を用意することが困難な相続人もいるとのこと。
こうしたリスクが想定される場合は、公正証書遺言にするのが賢明です。
公正証書遺言は、公証人が作成するため、形式不備による無効の心配がない確実なものです。
また、原本が公証役場に保管されるため、紛失や改ざんの心配もありません。
もちろん、公正証書遺言には、費用がかかる、気軽に見直しができないといったデメリットもありますので、両者の特性を比較して、ご事情に即した方法を選択してください。
まずは、遺言を残す必要性が高いのか否かといったことから検討する必要がありますね。
ご自身で判断しにくい場合は、どうぞご相談ください。
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