遺言を作成する際、遺言執行者を指定することができます。
ここでは、遺言を作成したいと考えていらっしゃる方に向けて、遺言執行者とは何か、その役割について簡単にまとめてみました。
遺言執行者とは、言葉の通り、遺言者の死亡後に遺言の内容を執行する人のことです。
民法では、「遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。」(民法1012条1項)と規定されています。
具体的には、相続人や相続財産を調査し、その財産を管理し、財産目録を作成・交付して、遺言の内容に従って、預貯金等の払戻し、不動産の売却・分配や所有権移転登記手続きなどを行っていきます。
遺言執行者の職務は、遺言の内容を実現することであって、相続人の代理人として務めることではありません。
更に、「遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。」(民法1013条1項)とされています。
遺言事項の中には、遺言執行者でなければ執行することができないものがあります。以下に記載した事項がそれに該当し、万一、遺言執行者が存在しない場合は、利害関係人の申立てによって、家庭裁判所で遺言執行者を選任して執行する必要があります。
【認知】
法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子をその父が認知することは、生前届出のほか、遺言によっても可能です。遺言による認知の場合、遺言執行者は、その就職の日から10日以内に届出をしなければなりません。
【推定相続人の廃除及びその取消し】
被相続人が、遺留分を有する推定相続人(相続が開始された場合に相続権がある人)から虐待や重大な侮辱、その他著しい非行を受けたときは、推定相続人の廃除として、その相続権の剥奪を家庭裁判所に請求することができます。廃除の意思表示は遺言によってもすることができ、遺言執行者は、遺言が効力を生じた後、遅滞なく家庭裁判所に請求しなければなりません。
生前に家庭裁判所に請求して、いったん認められた推定相続人の廃除を取消すことも、遺言によっても可能です。この場合も、遺言執行者は、遅滞なく家庭裁判所に請求しなければなりません。
【一般財団法人の設立】
一般財団法人の設立は、遺言によってもすることができます。この場合、遺言執行者は、遅滞なく定款を作成し、公証人の認証を受け、設立登記の申請などの手続きを行う必要があります。
相続人各人が協力し合って遺言の内容を実現できるのであれば、必ずしも遺言執行者の就任は必要ではありません。しかし、相続人の間にわだかまりがある、相互にコミュニケーションを取りづらいといったケースなどでは、遺言執行者が相続人に代わって手続きを進めることで、よりスムーズな遺言内容の実現が期待できます。前述の遺言事項を執行する場合も、遺言執行者が必要となります。
「遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。」(民法1006条1項)
このように、生前に遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託したいときは、遺言によらなければなりません。更に、遺言執行者を指定しても、遺言者よりも先に遺言執行者が死亡することもあり得るので、こうした事態を想定した遺言内容を検討すべきです。
「未成年者及び破産者は、遺言執行者となることができない。」(民法1009条)
未成年者及び破産者以外は、誰でも遺言執行者となることができます。弁護士、行政書士などのような有資格者だけでなく、財産を引き継ぐ人の中から指定することも可能です。また、法人も、その目的に反しない限り遺言執行者になることができます。
遺言者の死亡後に、必要性があるのに遺言執行者がいないときは、利害関係人の申立てによって家庭裁判所で遺言執行者を選任してもらいます。
以上、簡単ですが遺言執行者の基本的事柄についてまとめてみました。
遺言の作成をお考えの際は、遺言執行者を指定したほうがよいのかという点についても、併せてご考慮ください。
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